ほんの”一世代”で社会はすっかり変わってしまうことを、社交界を舞台に暴露する。
”永続化”なんて詭弁だ、ということが身震いするように迫ってきた。
「私の書物は、コンブレーのメガネ屋が客に差し出すレンズと同じく一種の拡大鏡にすぎず、私はその人たちに私の書物という自分自身を読むための手立てを提供しているにすぎないからだ。」ーーまさしくこの一文そのものの経験を私はした。
時を描く。この途方もない作品を読み終え、なんとすごいものに触れていたのか、私はおののく。とともに、生まれてきて、生き抜いてきて良かったと思う。自分の人生をかみしめられる、生きていてきた時をかみしめられる。そんな瞬間がこれまであっただろうか。この作品は、読む者が読む度に「生」の本質に触れられる、枯れることのない泉だ。
この作品をすぐれた日本語で読めるものとしてくださった吉川一義先生に感謝しかない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本<文学>
- 感想投稿日 : 2020年4月23日
- 読了日 : 2020年4月24日
- 本棚登録日 : 2020年4月20日
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