ライン 幻冬舎文庫 (幻冬舎文庫 む 1-17)

著者 :
  • 幻冬舎 (2002年4月11日発売)
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本棚登録 : 949
感想 : 68
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薄っぺらいもの、イージーなものに触れていると人間は暴力的になる。トートロジーだが、暴力はイージーの最たるものだ。断っておくが、決して、本書がイージーだというわけではない。

本書は近代という大きな物語が終わった後の物語だ。関係性は切れ切れだ。著者はあとがきでかいているが、大きくはポスト近代の物語として解釈できる。

登場人物に、共通なのは、葛藤がない、自分がない、ということだ。いみじくみ最後のユウコの感慨が「わたしには他人というものがない」であった。

しかし、可能性はある。「信号というのはそういうものじゃない」とのユウコのセリフがその唯一の鍵だ。自他を分けるもの。違和感がここにある。

田口ランディの解説に「病む」ことが「ライン」を抜けるゲートとあった。その通りだと思う。異常性に悩む、逸脱を抱え込む。そこにしか人間らしさはない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<文学>
感想投稿日 : 2018年7月5日
読了日 : 2018年7月5日
本棚登録日 : 2018年7月5日

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