平和構築入門: その思想と方法を問いなおす (ちくま新書 1033)

著者 :
  • 筑摩書房 (2013年10月7日発売)
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少なからず、平和、人権、人道の問題を学び、考えてきた自分にとって、著者が鋭く問いなおした内容は、まさに目から鱗であった。

善きことをなそうとして、悪き結果にいたる。

日本という特殊なメディア、思想環境にいることを自覚しなければ。

・P29:2012年の武力紛争一覧
・2008年、国連PKOは「中立性」ではなく、「公平性」を活動原則とすることを謳いあげた。
・戦争とは今現実に起こっているもののことだ、という理解は、第二次大戦以降の日本人には慣れない考え方だ。現代国際社会の標準である、国際人道法は、現実に戦争は存在する、という認識を出発としながら、戦争状態においてもなお「法の支配」を貫徹させる考え方を貫こうとする。
・戦後の日本人は、戦争を否定することが平和への道であると信じてきた。しかし、それは、国際人道法の考え方と必ずしも全く同じでない。
・今日の国際平和活動は、単に和平合意の維持を目的に中立的に振る舞うのではなく、より積極的に法規範の遵守を求めて活動を進めていく性格を持つ。それは全て国際人道法などの規範を広げるための法執行活動なのだと特徴づけることができる。
・むしろICCなどが被疑者の拘束などについて必ずしも目立った実績をあげていないことを考えれば、司法制度外の法執行活動が持つ意味は大きい。
・人道援助が害を与えるパターンとしては、援助物資の盗難を許して武装勢力に利益提供すること、大量の援助物資で地場経済を歪曲させること、分配がもたらす現地集団の関係に悪影響を及ぼすこと、援助依存を作り出して現地政府の無責任体質を助長すること、不適切な現地勢力の援助活動と結託して実態として不正行為を正当化してしまうことなどがあげられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<人権・平和>
感想投稿日 : 2016年6月9日
読了日 : 2016年6月9日
本棚登録日 : 2016年6月9日

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