私は私になっていく

  • クリエイツかもがわ (2012年10月20日発売)
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認知症は認知(頭)、感情(心)、魂と順に人間存在の深奥へと深まっていく、との記述にとてつもなく重要な事実に出会った感慨を抱いた。当事者の言葉はやはり深い。当事者との出会いも。

彼女はクリスチャンで生きる意味は神とともに見いだしているが、人間存在の真実については仏教の引用が光っている。宗教性の意味について考えてみたくなった。

・認知症と生きる私たちの多くは、この「現在」という感覚、「今」という感覚を切実に求め、一瞬一瞬を唯一の見つめるべき、感嘆すべき経験として大切にしている。
・認知症になったことで、彼女の思いやりの深い側面が前面に出てきました…ずっと穏やかな性格の人になったようです
・それは結局、あなたのアイデンティティを満足させるためだけのことではないだろうか?私を「今」という時に生きさせて欲しい。
・何かしなければならないことがあるのに、それが何なのか思い出せない。何か大変なことが起こるような気がするが、それがなんだったか忘れてしまったように感じる。
・私たちには感情はわかるが、話しの筋道はわからない。あなたの微笑み、あたなの笑い声、私たちにふれるあなたの手が、私たちに通じるものだ。
・ゴールドスミスの意思疎通のまとめ
・まるでそこにいない第三者のように私たちのことを話すのはやめてほしい。
・私たちが「この病気に苦しむ人」というだけのアイデンティティに適応してしまうならば、無力感を学習するだろう。
・認知症の人は、認知から、感情、そして魂へと続いていく大切な旅をしているのだと思う。私はこの旅を通して、本当に大切なものは残ること、そして消えゆくものは大切ではないことに、ようやく気づき始めた。
・私たちにできるのは、ただこの「今」という時を、あなたと一緒に強烈に体験することだけだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本<生の軌跡>
感想投稿日 : 2013年5月30日
読了日 : 2013年5月30日
本棚登録日 : 2013年5月30日

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