ガンディーに出会う前のインドの織工たちは、上等な布地はすべて、外国製の錦糸で織っていた。なぜなら細い糸を紡いでいなかったから――。
このことを知った著者は驚いたという。江戸時代に庶民の間で人気だった粋な縞がらの「唐桟(とうざん)」は、もともとインドの布を模倣したもので、高い技術に支えられていたが、それでも本場にはとうてい敵わなかったのだ。十八世紀後半までのインドは世界一細い錦糸を紡ぎ、大量に輸出していた。しかし産業革命と植民地支配によって、職人たちは自立を奪われる。ガンディーは自ら糸紡ぎを実践し、一枚の手織り木綿を体に巻きつけて非暴力の思想を示した。布はこのとき、共同体の中でのメディアの役割を果たす。
インドネシアのように布に神々が織り込まれる地域があれば、日本や韓国のように布に自然を描く地域がある。著者は制作現場を訪ねる一方で、伝統に憧れる富裕層の購買欲の問題も指摘する。
(週刊朝日 2011/2/11)
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週刊図書館 400字評
- 感想投稿日 : 2011年4月16日
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- 本棚登録日 : 2011年2月11日
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