原田さんのゴッホへの思いの深さは底知れない。「ゴッホのあしあと」、「たゆたえども沈まず」を先に読んでいた。
本作品は文庫化されたのを機に購入。すでに原田さんの緻密な資料調査、知りたくなった経緯、そして、原田さんの解釈によるゴッホとその弟、日本の浮世絵、薄いガラスのような過敏な精神状態、アルコール臭、そしてゴーギャンの存在。読む前からすでに頭の中に入っていた(つもり)。
さて、どのようなストーリーが待ち受けているのか?身構えながら読み始めた。
もちろん「ゴッホのあしあと」は原田さんご本人の視点で書かれたエッセイであり、気の遠くなるような調査に基づいて、「たゆたえども沈まず」を書かれた背景や様々な解釈、関わりのある土地の現況が描かれている。作品のバックグラウンドや原田さんのモチベーションがわかる。
そして、「たゆたえども沈まず」の作品自体では主に日本人画商の視点でゴッホの作品が世に出てきた歴史的な背景や浮世絵が与えた影響、ゴッホ自身の一生等が素晴らしい筆致で描かれていた。恐らく私のゴッホに対する印象が形作られたと言える。(すでに私のゴッホは原田さんの作品そのものだろう)
それら過去の作品の中でも謎に包まれていたゴッホの死。そしてその背景。その核心をゴッホを撃ち抜いたリボルバーを中心に、ゴーギャンとの関係を織り交ぜながらオークショニストの視点で創作しておられる。
これまでの綿密な調査を存分に生かしている作品だと思った。
どちらかというと中盤までは歴史的な検証がストーリーの中心だったけれど、特に最後の3章は原田さんならではの創作が光っていたと思う。心が鷲掴みにされてしまった。とても面白かった。
しかし、読みながら知らない言葉や絵を、ついついググってしまうのは私の至らなさ。
ほぼ1日で一気読み!
- 感想投稿日 : 2023年7月18日
- 読了日 : 2023年7月18日
- 本棚登録日 : 2023年6月22日
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