今は昔――。
中納言には娘が数人いたが、その中の一人“落窪の君”は実の母を亡くし、中納言邸で継母である北の方に使用人のような扱いを受けていた。
宮家の血筋を引く落窪の君は、姿も心も美しく、また縫い物が得意だった。継母や腹違いの姉妹の婿のために縫い物をする日々を送っていたが、その落窪の君のことを聞いた“少将”は、落窪の君に文を送る――。
前半は原文、後半は現代語訳。原文には細かい注がつけられ、会話文の前には発言者も明記されているので、原文を読みつつわかりにくい部分を現代語訳で補うという読み方が良いと思う。ただし上巻の補注も下巻にまとめられているので、手元に下巻がないときは不便だった。
物語の内容は、よく「平安のシンデレラストーリー」と言われるが、グリムのシンデレラなんて足元にも及ばないほど、こちらのほうが面白い。
落窪の君は高貴な血筋なせいか、心優しくめそめそ泣いていることが多いのだけど、落窪の君を救い出し、継母たちに復讐する少将の行動力がすごい。
なにより、何人もの妻を持つのが常識のあの平安時代にあって、落窪の君ひとりを愛し大切にする少将が、本当に素敵。光源氏なんてクズ男だ!
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
古典
- 感想投稿日 : 2009年11月1日
- 読了日 : 2009年11月1日
- 本棚登録日 : 2009年11月1日
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