聡明で繊細で純潔無垢な娘・阿字子。家父長制に縛られ傷ついていく様子は痛々しくて堪らなかった。反面すぐに自殺を仄めかしたり、当てつけのような行為を振る舞うといったペシミズムに苛々もした。阿字子に感情移入し切るには私は相当に年をとり過ぎてしまったようだ。しかし野溝七生子の気高く穢れない文章は純度の高い宝石のように貴い煌めきを放ち、永遠の少女が持つ魔に魅入られてしまったことは否めない。少女期に受けた傷は、ふとした切っ掛けで突然甦る。忘れていた痛みがじくじくと、嘗ての少女には少し煩わしく少し懐かしい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年10月10日
- 読了日 : 2015年10月10日
- 本棚登録日 : 2015年10月10日
みんなの感想をみる