時は二つの大戦の狭間、場所は東京本郷の信楽町(たぶん架空)。そこに住み集う者らの交遊録。のんびり豊かな時代を感じる。人情と機知もある。案の定吉田健一の文はヘンテコで「なんじゃこりゃ?」と理解が及ばないことがままある。けど読み進める。この流れに揺蕩う心地よさを寸断させるのは以ての外。酒をちびちび呑みながら読むがいい。一体どっちに酔っているのだか混濁を味わうがいい。自転車屋の勘さん、帝大生の古木君、社長の川本さん、下宿屋のおしま婆さんもすぐそこに居そうで、幽玄の彼方で朧にもなる。この酩酊感は病みつきになろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2015年1月18日
- 読了日 : 2015年1月18日
- 本棚登録日 : 2015年1月18日
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