東京の昔 (ちくま学芸文庫 ヨ 12-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (2011年1月8日発売)
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時は二つの大戦の狭間、場所は東京本郷の信楽町(たぶん架空)。そこに住み集う者らの交遊録。のんびり豊かな時代を感じる。人情と機知もある。案の定吉田健一の文はヘンテコで「なんじゃこりゃ?」と理解が及ばないことがままある。けど読み進める。この流れに揺蕩う心地よさを寸断させるのは以ての外。酒をちびちび呑みながら読むがいい。一体どっちに酔っているのだか混濁を味わうがいい。自転車屋の勘さん、帝大生の古木君、社長の川本さん、下宿屋のおしま婆さんもすぐそこに居そうで、幽玄の彼方で朧にもなる。この酩酊感は病みつきになろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2015年1月18日
読了日 : 2015年1月18日
本棚登録日 : 2015年1月18日

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