主にヨーロッパにおける、歴史上の出来事にからめた「死」の歴史を紹介している。その時代その時代の「死」に対する考え方や風習等も合わせて紹介されており、非常に興味深い内容となっている。
「情死」というくらいなので、男女の熱く悲しい恋愛の末の死をイメージして読み始めたのだが、著者らが考える「情死」はさらにその意味に幅を持たせており、「信念に対する愛」、「神に対する愛」といった、およそ愛に結び付くすべての事象と、そこから結果的につながってしまった「死」について、淡々と紹介されている。
こうしたテーマにくどくどとした解釈を付け加えることは野暮であると思うし、本書は説明を必要最小限にとどめている印象を受ける。そのため、読者がそれぞれの死に思いを馳せる余地がたくさん残されており、非常に読み物として優れた作品であると考える。
残酷な異常性愛の果ての殺人から、穏やかな愛に包まれて迎える死まで、愛のつまった死の歴史を知ることは、人間の本質を垣間見ることにもなろうかと感じた次第である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
生き方・哲学
- 感想投稿日 : 2011年5月15日
- 読了日 : 2011年5月12日
- 本棚登録日 : 2011年5月15日
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