ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2007年2月24日発売)
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本棚登録 : 2607
感想 : 349
5

こんなに「続きが読みたい」と思うとは、思っていなかった。
最初は独特のテンポや比喩のお陰で、何のことを言っているのか、どういう意味なのか分からなくて、しかも私が知らない言葉がこれでもかと出てきて、話の面白さとは別に読みにくいなーとは思った。
新選組の喩えは好きなので分かりやすかった。

小学校低学年から始まり、低学年なのにこんなに色恋のこと話題にしてたっけ、と思ったけど、思い出してみたらそんな会話してたなと。

あとがきにも解説にもあったけど、これは大人が読んで面白い話。私のようにもう子供でもないけど、34歳の大人でもない年齢では、中途半端なのか、共感できるということはなかった。その代わり、過ぎ去った子供時代を思い出すことはできて、懐かしかった。
大きくなったら、子供の時は気楽でいいなんて思うかもしれないけど、子供は子供でその世界が全てなんだし、子供だから大人の言ってることが分からないなんてこともない。ちゃんと考えてるし、感じている。だから「噂」になったら、もうその世界では生きていけないんだと思う。

私は隼子みたいな大人びた子供の気持ちは分からないけど、河村先生が魅力的に見えるのは分かる。私が学生の頃は20代の先生ってほとんどいなかったけど、きっと若くて大人っぽくて落ち着いていて、それだけで憧れちゃうだろうなって。
読んでいるうちに、中学生と先生が恋愛して何が悪いのかって思ってくる。それぐらい二人は惹かれてたのに。
隼子が熱を出して先生に送ってもらうところや、美術準備室の場面がすごく好きだなあ。

三ツ矢のような嫉妬する人間はどこにでもいる。そこじゃないでしょっていうところに、攻撃して、壊そうとする人間が。好きの度合いが高ければ余計に。だから客観的に自分を見られない人は怖い。

隼子と先生は一旦別れたけど、その直前にお互いのことが好きだと実感していて、それが切なかった。私はもう二人のことを応援してしまっていたから、なんで離れないといけないのか全然わからなかった。

最後、大人になってから再開するけれど、二人が幸せになるならそれは良かったのだけど、急に現実的というか、夢から醒めたような気になって、あぁ子供時代って特別なんだなーと思った


この話の舞台はどこなんだろう、大阪や京都でないし、言葉を見る限り兵庫和歌山奈良も違うので、滋賀かな?
セピア色がよく似合うお話。

20161119

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家は行
感想投稿日 : 2017年1月9日
読了日 : 2016年11月19日
本棚登録日 : 2016年11月19日

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