初めて書いた小説は父親を薪割りで叩き殺す話であったー自らの創作のルーツから、父との複雑な関係を描き続けた色川武大の4つの作品を収めた短編集。
作品全ては時系列は異なれど、父親との関係性を巡るものである。叩き殺したい、という明確な憎悪があるわけではないけれど、かといって愛情があるわけでもない。それでも父がただ寂しく亡くなるのだけは避けたいと思い、珍しく能動的なアクションを取る「永日」が印象的。
日本文学の潮流の一つである私小説の流れを色濃く受けている作品である。そしてそこには、私小説というものの意味合い、つまり極めてパーソナルな事柄を突き詰めていけば、万人に通用するユニバーサルな何かが描けるはずだという観念が間違いなく具現化されている。いずれ自身にも父親のこのような場面に接するのではないか、という漠然とした不安が心に強く残った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2020年5月3日
- 読了日 : 2020年5月3日
- 本棚登録日 : 2020年4月12日
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