文人悪食 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2000年8月30日発売)
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日本の名だたる文豪たちを”食事”というキーワードから徹底的に掘り下げ、彼らの人間性、そして作品への影響を綴ったエッセイ、というよりも一種の文学批評にすら思えてくる力作。

取り上げられるのは夏目漱石に始まり、三島由紀夫に至る37人の文人。日本の文学史を彩る超重要人物ばかりであるが、作品だけでは見えてこない人間としてのリアルな生きざまが垣間見れて純粋に楽しく、感嘆させられる箇所が多い。

一言で”食事”といっても文人たちの嗜好性は本当に千差万別である。谷崎潤一郎のように美食を愛したものもいれば、泉鏡花のように病原菌など生ものへの恐怖から大根おろしですら煮込む(!)もの、森鴎外のように饅頭をご飯の上に乗せてお茶漬けにして食べる独特の食習慣を持つもの、そして石川啄木のように豪華な食事を友人たちに奢らせるのを至極当然に振る舞うもの。そうした”食事”に対するそれぞれの嗜好は、自然と作品へと影響していくと考えても違和感はないだろう。

これを読んだ上で改めて文士たちの作品を読み返したいと思ったし、未読の作家・作品を読んでみようとも思った。日本文学の豊饒さを改めて実感した次第。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ・随筆
感想投稿日 : 2021年12月5日
読了日 : 2021年12月5日
本棚登録日 : 2021年11月23日

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