北朝鮮による能登半島沖不審船事件を契機として、海上自衛隊に設立された「特別警備隊」。この設立に一自衛官として関わった著者が、不審船事件の生々しい模様や、「特別警備隊」の激しい訓練の様子を題材としながら、「論理を超えた世界で、生命を賭す」ということが、どのようなことかを伝える。
もちろん、本書の冒頭に描かれる不審船事件のドキュメントや、自衛官の職を辞した後にミンダナオ島で20歳そこそこの女性海洋民族と常軌を逸したようにも見える激しいトレーニングを繰り広げるさまなどは、読み物として息を付かせぬ勢いでこちらに迫ってきて、大変面白い。
その面白さとは別に、「特別警備隊」の隊員たちが自らの生命を賭して任務にあたる様子からは、我々の日常的な生活には存在しないような論理を超えた深淵が見える。自衛隊という存在に対して、政治的な評価はカッコに入れた上で、この深淵の一端に書籍を通して触れられるのは貴重な体験のように思える。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
政治・経済
- 感想投稿日 : 2017年1月9日
- 読了日 : 2016年12月28日
- 本棚登録日 : 2016年12月23日
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