アメリカ占領期の1946年から51年にかけて、沖縄は”ケーキ”(景気)時代と呼ばれ、そこでは終戦後の復興に必要な様々な物資を闇市場から媒介する密貿易が異常な熱気で栄えたという。本書は、”ケーキ”時代にその類稀なる商売センスを持って数多もの男を使いつつ、密貿易商として成功した金城夏子という女性の生涯を描いた傑作ノンフィクションである。
当時の沖縄でこうした密貿易が盛んで、老いも若きも一攫千金の夢を求めて、ときには船ごと海に沈むリスクも追いながら貿易に明け暮れる時代があったというのは、不勉強にして知らなかった。本書では密貿易に関わった沖縄出身、本土出身、はたまた台湾などのアジア諸国など、様々な出自を持つ関係者へのインタビューによって明かされていく。
そして何よりも娘を生みつつも商売の忙しさの中で子育てには十分な時間が取れないまま、激務がたたってか若くして亡くなってしまう”ナツコ”の運命の稀有さも心に残る。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2020年12月12日
- 読了日 : 2020年11月7日
- 本棚登録日 : 2020年10月31日
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