”最も汚辱に塗れた俗なるものが一転して聖なるものと化す”というのは古典以来の一つの文学などにおけるテーマであるが、そのテーマを現代において描こうとした労作・・・と言えないこともない。
女でありながら男性と偽ってゲイバーで過激なショーを演じるタマと、偶然にきっかけから彼女に魅せられ結婚することになる武史という2人の関係を軸に、俗なるタマが武史の目にとって徐々に聖者へと転化していく様子を描く小説。そのテーマ自身は頭では理解できるのだが、なぜそのような転化が発生するのか、という理屈が正直伝わってこず、作品に入り込めなかった感が強い。
こういうアナーキーなテーマを描こうとする心意気は非常に買うし、決して面白くないわけではないのだが、これが傑作と言えるかというとそれは違い、もっと別の作品を読んでみたい、という気はわずかにさせられる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2022年4月3日
- 読了日 : 2022年3月25日
- 本棚登録日 : 2022年3月27日
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