亡羊の嘆 鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社 (2008年6月6日発売)
3.52
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本棚登録 : 241
感想 : 42
5

なんと今回は都築教授のコメントからのタイトルじゃなくて、龍村先生のコメントからのタイトルやったね!!
(って、そこまで盛り上がることじゃないんかもしれへんけど)

このシリーズ、好きやわ~。ちゅうか最早著者が好き・・・。
まだまだ著者の本は(このシリーズじゃなくても)未読なものが蔵書にあるからうっひゃあとなるけど、むしょうに著者のBLが読みたいねん・・・。買う・・・?

・・・と、まあそれはおいといて、今回の話はシリーズ一好きかも・・・。
キャラがイキイキ動いてる気がするのは、これだけシリーズが続いてきてるからかな? なんかし、著者のキャラが好きやからね~。

龍村先生が書き込まれたこととか(龍村×伊月説も浮上か・・・)、新たなキャラの高倉さんとか、面白い人が増えた!
せやから、もっとようけ既刊本があればいいのになあー。
内容が内容だけに、サクサク書けるシリーズじゃないんやろうね。しょうがないよな。

そんなこんなでキャラが増えたせいか、冒頭に「登場人物紹介」なるものが載ってたし!
またそれも面白かったし!!

ああー、好き・・・。

また、作中でもちゃんと時間が過ぎていってるので、伊月くんが成長していってるのも微笑ましいー。
彼はイケメン設定やったのか(笑)。
周囲からのイジられぶりはとてもイケメンには思えないけど、ミチルさんもエキセントリック美女みたいやし、このシリーズはビジュアル的にも楽しめる仕立てやったのね(今更?)。


著者は同年代なのではないかと思う・・・。
なので、心理描写に馴染みやすいというか、それこそ居酒屋で飲みながら「ウンウン」と、聞いているような気安さがあるねん。
そこが、面白い。

今回は「若者のプロトタイプ」ちゅうミチルさんの説。
自分の関心事には熱心やけど、それ以外には無頓着、と、いうのは、
「うっ」
と、思うところがあるよね。

おおらかな方面でのそれならいいけど、無責任となるとちょっとマズイ。
何にでもに粘着質になるのも一歩間違えば自分可愛さというか、自意識過剰なのか自信過剰なのかっていう話になるけど、無責任なほど無頓着なのも、自分可愛さやんね・・・。

他人との距離感!! 正直、これが難しいと思う。
そんなもの、古来から難しいものやったんやろうけど、伝達ツールばっかり発展してしまった昨今は、連絡を取るというツールだけがやたら簡素化されたんだよね。

早さばっかり重視で、内容はちょっと後回しになるので、余計に誤解を招く・・・。と、いうか、想像する暇がない。
とはいえ、昔はよかったとか、昔がよかったとかいうててもしょうがないので、現代のスピード社会でもちゃんと伝わるような距離感で人と接していけるようにならないとあかんねやろうね。


ほんで、龍村先生の「視野と行動力の間の質量保存の法則」な。(この言い回しがすでに理系なんですけど。笑)

行動力があるうちは視野が狭くて、視野が広くなると行動力が落ちるのだそうだ。
それだけやと
「ふーん」
なんやけど、その先、正しいことをやっているかとか自分の行動は真面目に考えての結果だとか、そういうことは自分で判断することではない、と。

評価は第三者がすることであって、自分でしてはいけないらしい。
自分のやっていることが正しい、と、かたくなになるということは、自分以外の他人は間違っている、と、傲慢になることにもつながる。
他人を見下す気持ちがあると、それが本当に正しいことであっても他人の心には響かない・・・。

のだそうで、
「うわー」
と、思ったよ。だって、あるもん。私も、ある。自分のやってることは正しい、と、思うことってある。
そういうときって確かに傲慢になってるわー。

ほしたら、自分なんて、と、一歩も二歩も引いていればいいのかっちゅうたら、それも違う。
自分の正義はこれ、でも、目の前の人にも、目の前にはいないけれどどこかにはいる他人にも、「自分の正義はこれ」と、いう物差しがあるのだと。
ほんでその物差しは人それぞれ違うから、どちらが正しいかを決めるんじゃなくて、違う物差し同士でどう円滑にやっていくかをすり合わせることのほうが大事、ってこと。

うん。そうなんだよね~。
でも私はなかなかそれがうまくできないのよね~。
まったくすりあわせができない・・・。相手に恵まれてないのかと思うときもあったし、いやいや自分が頑固すぎるのかと思うこともあった。
一周回って今はもうよくわかんない。できれば、すり合わせる必要があるような人と接するのは最小限にしたいと思ってるし、めっちゃすり合わせな成り立たないのであればしばらくはひとりでいいかな・・・、と、いう気持ちもある。
(でも10年後も同じことを言っている自信はない・・・)

このあたりの想像力も欠落している世代のような気もする・・・。
だから、著者って同年代なのかな、と、思った。


さてそんな感じに枝葉の話ももちろん面白かったけれど、ミステリとして二つの事件がつながっていく過程も
「伊月たちはどこで気づくのかな?」
と、いう先の展開のお楽しみもあったし、またその真相がこちらの予想からぐっと踏み込んだものやったのもよかった。

先日、「悪役にも悪役の事情があって、やむなく犯罪を犯す」と、いう理由づけが流行っている云々ということを聞いたけれど、こんなふうに
「どうしようもないな」
と、いう犯罪も、それはそれで(小説として読むなら)深かった。

(「面白かった」とは、言いにくい・・・)

軽めのミステリと、一味も二味もある登場人物。ほんで、いろいろ妄想したくなる行間な!
こういうテイストは講談社ノベルスならではやと思う。講談社ノベルスはいいなあー! 何やろうね、この独特の雰囲気。


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■機序 きじょ

しくみ。機構。メカニズム。


■塩辛声

かすれた声。しわがれ声。


■ソリッド

1 固体。また、固体状であるさま。「ソリッドにした整髪料」
2 堅固なさま。硬質であるさま。また、うつろでなく中まで密であるさま。

(2017.04.22)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年10月12日
読了日 : 2017年4月22日
本棚登録日 : 2017年10月12日

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