人がなぜ不合理なお金の使い方をしてしまうのか、行動経済学で解説する本。いかにもありそうな架空のお金にまつわるエピソードがあり、その裏にある人間の特性を解説する構成。「こう振る舞うべき」というより「このように振る舞ってしまうから気をつけよう」という本。
よく「お金をどれくらい使ったか分からないからクレジットカードは怖い」という意見に対して「自動で記録されるクレジットカードの方が、現金よりも使った額が分かりやすい」という反論がされる。これはどれくらい使ったかを「数値」で考えるならば正しい。しかしどれくらい使ったかを精神的な痛みで考えるならば間違っている。クレジットカードは消費と支払いのタイミングにズレがあり、手を動かす量が小さいので、「支払いの痛み」は現金よりもはるかに小さい。お金の管理を数値ではなく痛覚で管理している人にとって、「クレジットカードは怖い」という認識は正しいのだ。
この本を読むと、人間がお金の使い方をその都度判断するのは無理があるように思える。お金を賢く使うためには、セイレーンへの対策をしたオデュッセウスのように、冷静な段階で適切な仕組みを構築するのが最善であると言える。
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- 感想投稿日 : 2019年10月14日
- 読了日 : 2019年10月13日
- 本棚登録日 : 2019年10月13日
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