光の山脈 (ハルキ文庫 ひ 5-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2006年3月1日発売)
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感想 : 18
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文庫帯の「山岳冒険小説の金字塔」は、けっして誇張された讃辞ではない。
山でしか己の生き甲斐を見出せない主人公ロッタ。そして、不幸な過去を持ち、生きるうえでの彼の存在が欠かせない妻の亜希。
彼らと、暴力団と産廃業者の悪行を新聞で暴露したロッタの兄に、魔の手が伸びる。
「純粋無垢にして自由奔放」、正義という言葉を何より信じるロッタ。復讐の念に燃えた彼は、兄と妻の仇を撃つべく、組事務所ですさまじい銃撃戦。
さらに、狼犬シオを従え、豪雪と極寒の南アルプスで、暴力団を相手に、一人サバイバル戦を繰り広げる。
その壮絶な戦いに、頁置く能わずも誇張と言えず、読む手が止まらない。
「古典的西部劇や東映やくざ映画のよう」とは、言いえて妙。
そんなハードアクションの一方、この小説に爽風をもたらすのは、ロッタと妻との愛。それに、彼らが最初に絆を深め、死闘の後のクライマックスの舞台ともなる”物見岩”と、そこからの絶景。
今、実在するその一枚岩物見岩は、登山者の隠れた名所となっているらしい。そこからの絶景を、一度見てみたいものだ。

ロッタを側面援助する、山梨県警の堂崎雄一と山梨日報の沢村聡志。彼らの名前に、それぞれ堂場瞬一と沢村鐡の両氏の名前を想起したのは、読み手だけだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 山岳冒険小説
感想投稿日 : 2018年5月17日
読了日 : 2018年5月16日
本棚登録日 : 2018年5月17日

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