ムーンライト・イン

著者 :
  • KADOKAWA (2021年3月2日発売)
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かつては賑やかだった元ペンション「ムーンライト・イン」
雨の夜にずぶ濡れでドアをノックをしたのは フリーターの拓海、35歳。

そこでは、70代のオーナー・虹之助 と 女性三人が共同生活をしていた。
80代のかおる、50代の塔子、フィリピンから来た20代のマリー・ジョイ。
三人はそれぞれ秘密を持ち、事情を抱えて、ここへ逃げてきていたのだ。

雨をしのぐため、一晩だけ泊めてもらうはずだった拓海だが
怪我をして治療が必要になり、四人目の同居人になる。
「マリー・ジョイ、わかっちゃった。
あなたもムーンライト・フリット(夜逃げ)でしょ?」

年齢も性別もバラバラな五人が、それぞれ役割分担をして暮らす。
適度に一人になれて、適度に他人が身近にいる居心地の良さ。
高原の美しい景色と 採れたての新鮮な野菜。
まるで天国のような平和な世界での静かな生活。
そこでは不思議な調和が保たれていた。

しかし、逃避の原因になった現実が消えたわけではない。
パワハラ、セクハラ、家族の意見の相違、外国人技能実習生の問題など。
女性たちは、いつまでもこの「休み」が続くことはないと認識し
ここでの安らぎを力に、再生への道を探り始める。
一方、男性二人が夢を見つづけようとする姿は対極的で面白い。

とりわけ、フィリピンの若い女性、マリー・ジョイには拍手。
彼女はずっと、元気で楽しくて素敵だったけれど
最後のシーンは、あっぱれ!!としか言いようがない。

手に負えないことから いったん逃げて休んで。
そんな場所と時間があったら、人はもっと元気になれるかも…ね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中島 京子
感想投稿日 : 2022年4月1日
読了日 : 2022年4月1日
本棚登録日 : 2022年4月1日

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