ふぉ~、ほっこり! いい話。
読み終えて、本を閉じて感じる世界は、
澄んだ空気、やわらかな風、そして彩り豊かな光の色。
美緒は東京の私立高校二年生。
友人との関係が原因で学校に行けなくなる。
家庭では母親との折り合いが悪く居場所もない。
そして、父母の関係も希薄で家庭崩壊寸前。
そんな美緒が衝動的に逃げ込んだのは
盛岡でホームスパンの工房を主宰する祖父の家。
生まれてから一度も会う機会のなかった祖父。
それなのに美緒が盛岡へと向かったのには理由があった。
不安定な美緒の心の拠り所が、体を温かく包んでくれる
祖父の工房のタグが付いている赤いショールだったから。
「せぐな。せがなくていい」
口数の少ない祖父の温かさに包まれ、
美緒はゆっくり心を癒していく。
羊の毛を洗い、染め、紡ぎ、織りあげる。
手仕事で丁寧に仕上げるその工程のように
もつれてしまった人と人との関係を
ゆっくり時間をかけて織り直す。
途中で切れた糸は、新しい糸をつまんで絡ませる。
そうすると、新しい糸が生まれる。
なんて素敵!
ずっと前。
夫がホームスパンのネクタイをいただいたことがあります。
手触りが柔らかくてふわふわで、軽くて、たしかに雲みたい。
義父には盛岡に親戚がいて
盛岡がどんなに素敵な街なのか、何度もお話を聞きました。
物語の途中で出てきた「クルミゆべし」は
お土産にいただいて、すっかりファンに!
最近のニュースで、
外国人に人気ナンバーワンの町が盛岡だと聞きました。
宮沢賢治による造語だとされるイートハーブ。
本作品の最後にも登場します。
「理想郷」という意味で、
エスペラント語で岩手県という意味だとか。
一度、ゆっくり行きたいな。
- 感想投稿日 : 2023年8月15日
- 読了日 : 2023年8月15日
- 本棚登録日 : 2023年8月15日
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