雲を紡ぐ

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年1月23日発売)
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本棚登録 : 3486
感想 : 376

ふぉ~、ほっこり! いい話。
読み終えて、本を閉じて感じる世界は、
澄んだ空気、やわらかな風、そして彩り豊かな光の色。

美緒は東京の私立高校二年生。
友人との関係が原因で学校に行けなくなる。
家庭では母親との折り合いが悪く居場所もない。
そして、父母の関係も希薄で家庭崩壊寸前。
そんな美緒が衝動的に逃げ込んだのは
盛岡でホームスパンの工房を主宰する祖父の家。

生まれてから一度も会う機会のなかった祖父。
それなのに美緒が盛岡へと向かったのには理由があった。
不安定な美緒の心の拠り所が、体を温かく包んでくれる
祖父の工房のタグが付いている赤いショールだったから。

「せぐな。せがなくていい」
口数の少ない祖父の温かさに包まれ、
美緒はゆっくり心を癒していく。

羊の毛を洗い、染め、紡ぎ、織りあげる。
手仕事で丁寧に仕上げるその工程のように
もつれてしまった人と人との関係を
ゆっくり時間をかけて織り直す。
途中で切れた糸は、新しい糸をつまんで絡ませる。
そうすると、新しい糸が生まれる。
なんて素敵!

ずっと前。
夫がホームスパンのネクタイをいただいたことがあります。
手触りが柔らかくてふわふわで、軽くて、たしかに雲みたい。
義父には盛岡に親戚がいて
盛岡がどんなに素敵な街なのか、何度もお話を聞きました。
物語の途中で出てきた「クルミゆべし」は
お土産にいただいて、すっかりファンに!
最近のニュースで、
外国人に人気ナンバーワンの町が盛岡だと聞きました。

宮沢賢治による造語だとされるイートハーブ。
本作品の最後にも登場します。
「理想郷」という意味で、
エスペラント語で岩手県という意味だとか。
一度、ゆっくり行きたいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伊吹 有喜
感想投稿日 : 2023年8月15日
読了日 : 2023年8月15日
本棚登録日 : 2023年8月15日

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コメント 3件

Manideさんのコメント
2023/08/17

yyさん、こんばんは。

いい作品ですよね〜
本を閉じて感じた表現がいいですね。
私も一冊を大切にと意識しながら、読み終わった時の味わいが足りていないなと反省しました…

ホームスパンが身近にあったんですね、すごい(^^)
身近に良いものは持っておきたいですね。

yyさんのコメント
2023/08/17

Manideさん

嬉しいコメントありがとうございます☆彡
ふわふわしたものに弱いんでしょうか…。
表紙の絵にもすっかり キュン♡ とやられちゃいました。

ホームスパンは、たまたま あったのを思い出しただけですが
本を読んで、ちょっとだけ生活が豊かになった気がしましたよ (^^)♪

Manideさんのコメント
2023/08/18

yyさん、おはようございます。

みんなフワフワしたものに弱そうですよね。
人間の本能かもしれないですね。
雲をみると、フワフワしているようにしか見えないですもんね。

いま手元にある本を読んだら、次はフワフワしたお話を読みたくなりました(^^)

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