1582年、天正遣欧使節団一行がローマに向けて出港しました。
これは歴史的事実です。
下巻の最初に語られていたのは、出港から一年九か月後に
インドのゴアに到着したということ。
え?!そんなに時間をかけて、まだインド??
当時は風を待ちながらの航海で、
良い風が吹くまで、季節をまたぐ寄港をしていたようです。
ローマへの果てしない道のりに頭がくらくらしました。
そして、天正遣欧使節が渡航していた時期に
カラヴァッジョがミラノで修行をしていたというのも事実。
同い歳くらいの少年が日本からローマ教皇謁見に来たことを
カラヴァッジョは、きっと知っていたことでしょう。
さらに、謎の多い俵屋宗達。
当時、使節団と同い年ぐらいだったということも推測されます。
原田マハさんは、これらの素材をもとに
奇跡の出会いと 固く結ばれた友情で色付けをして
言葉で独自の絵画を描き上げたかったのではないでしょうか。
トスカーナ大公邸に現れたまぼろし。
システィーナ礼拝堂に突如 吹いた風と閃く光。
物質的な見地から読んでいると不思議に思われる描写です。
でも、物語という絵画の中で光っている部分だと思うと なるほどです。
少し残念なのは、エピローグで現実に引き戻されて
梯子をはずされたように感じたことです。
そもそも、望月彩のくだりは必要なのでしょうか。
こういう事実と推測の上にこんな物語を作ってみましたが、
いかがでしょう?
で、よかったのでは?
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
原田 マハ
- 感想投稿日 : 2021年8月10日
- 読了日 : 2021年8月10日
- 本棚登録日 : 2021年8月10日
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