形相: 歌集 (岩波文庫 青 167-1)

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  • 岩波書店 (1984年7月16日発売)
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戦後東大総長を務め、丸山眞男の師としても知られる政治学者・南原繁の歌集。2.26事件の発生した1936年の元旦から、1945年5月のドイツ降伏までの自選歌集であり、1948年に刊行されたもの。同時期に話題となった桑原武夫の短歌・俳句批判ををどう見ていたのかが気になったが、たぶん相手にすらしていなかったのだろう。

真珠湾攻撃に際して詠んだ「人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ」に代表されるように、時局への批判的精神を、75年後の現在にも静かに伝える作品。ドイツ降伏で作品が完結しているのは、著者あとがきによると多忙と情勢のさらなる緊迫化のためとのこと。このため8月15日の歌がないのは少々残念ではあるが、1945年の元旦に際して既に以下のように詠んでいた筆者にとっては、今さら不要だったということなのかもしれない。

「わがどちのいのちを賭けて究めたる真理のちからふるはむときぞ」
「戦のむしろ後(のち)なる国民(くにたみ)の底力しもわれはおもはむ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年7月25日
読了日 : 2020年7月25日
本棚登録日 : 2020年7月25日

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