「五五年体制」から「自公体制」へ。本書の小見出しの一つである。自自公連立が1999年なので、民主党政権の3年間を除いて、もう20年近く自公体制が続いてきたことになる。五五年体制を94年の細川内閣までの39年間とすると、自公体制はその半分に既に達している。
公明党のこの存在感の一方で、その歩みや特徴をまとめた本は、これまであまりなかった。本書はこの欠落を埋めるもので、1950年代に始まる創価学会の政界進出から64年の結党、70年の言論出版妨害事件、75年の創共協定とその破談、90年代における新進党への参加とその失敗などを経て、2014年の集団的自衛権支持に至るまでの軌跡がまとめられている。他国の連立政権と比べた際の自公連立の特異性(政策の乖離と全面的な選挙協力)や、候補者の選定過程についての記述も興味深かった。
筆者によると公明党の議員は、「選挙に出たい人」ではなく周囲が「出したい人」たちで、マジメでこつこつ型らしい(国会図書館の利用率が圧倒的に高い政党は、公明党と共産党だそうだ)。だが、こうした人たちは自民党との駆け引きには不向きなことが多い。また、福祉など教育など特定の分野では自主性を発揮する一方で、国家全体のビジョンを打ち出す力は弱いと筆者は評価する。
公明党関係者への取材が活用されるとともに、適切な距離感も取れており、中公新書らしい一冊。
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- 感想投稿日 : 2021年4月12日
- 読了日 : 2021年4月12日
- 本棚登録日 : 2021年4月12日
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