GHQ焚書図書開封: 米占領軍に消された戦前の日本

著者 :
  • 徳間書店 (2008年6月30日発売)
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本書の特徴、目的と思われる事項を最初に述べておきたい。

 本書は大東亜戦争後の米占領軍によって日本国内に流通していた数多の出版物のうちの、占領政策の障害になると判断された出版物(主に、防衛関係や日本の精神文化に関連する書物、白人に不都合な真実が記述された物や政治的な物等々、7769種)が焚書(※1)された事実を日本国民に広く再認識してもらう事が大目的の一つ。

 そして、この目的は何の為に為されるかというと、戦前から戦後にかけての日本民族の思想や歴史、思考過程の連続の断絶を埋め合わせて連続性を取り戻す事を、本書読者やこの事実に触れた人々を皮切として、多数の国民と共に目指すことが大目的の二つ目。

 さらに、この「連続」なるものを何ゆえ意識するかというと、著者の現在から将来にかけての日本に対する憂い、心配、思いが錯綜する。今後日本が外圧に屈することなく自主独立を維持し、伝統文化を保持し発展していくには、歴史の連続性の再認識が必要不可欠であり、この観点からも、消された事実を掘り起こして歴史を再認識すべきという持論がある。

 ※1 焚書: 焚書といえば、通常は対象書物の存在そのものを完全にこの世から抹殺する行為を連想するかもしれない。しかし、GHQの行った焚書は、対象書物を一般流通過程から抹殺する行為に留まっており、一般家庭にすでに販売されてしまったものの強制回収や、図書館に収蔵されたものの抹殺は行われ無かった。故に、このような焚書開封が専門家によって可能なのである。このような焚書方式は、表向きは「民主主義、言論・出版の自由」を標榜する占領軍の苦渋の選択だったと推察されるが、このような緩やかな焚書方式でも一般大衆が耳目にする機会を奪うには十分すぎるほどの効果を出したことは歴史が証明している。またサヨクの捏造歪曲偏向史観を間接的に擁護する結果にもなっている。

 「GHQ焚書図書開封」は現在第四巻まで刊行されているが、本書は第一巻目である。最初に「GHQ焚書図書」とは何か?を説明し、続いて焚書図書を一部具体的に紹介していく展開となっている。大雑把に言えば、焚書図書紹介部分以降は、著者による焚書図書のやや詳しい書評といった感がある。

 本書で紹介されている焚書図書は、戦記物や諸外国の歴史・政治事情を記した物等があるが、これらを読むと当時の日本人がいかに感じ、思考し、物事をどのように捉え、どのような常識をもって観察していたか等等がひしひしと伝わってきます。

 焚書図書の紹介は、原文そのままの引用、著者による解釈・説明、が交互に記述されていく形式となっています。

 尚、あえて付記しておくと、本書は「歴史事実」の分析書の類ではありません。焚書図書を再発見し、当時の日本人の物事の捉え方や思考・思想等に接して研究することに重点があると判断されます。ゆえに文章の記述に、著者の推論による断定的な記述、主張が散見されますが、本書の目的を考えれば特に問題はないと思われます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2011年11月3日
読了日 : 2011年11月3日
本棚登録日 : 2011年11月3日

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