もものかんづめ

  • 集英社 (1991年3月20日発売)
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本棚登録 : 1557
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頭からっぽにして笑えるエッセイと聞かれれば迷わずさくらももこさんの本を選びます。当たり前の日常を鋭い観察眼でユニークに、時に毒っ気たっぷりに切り取り、面白おかしく正直に表現できる方を挙げれば、さくらももこさんの右に出る者はそうそう居ないのではないでしょうか。
幼い頃に初めて本を手に取り、大人になった今でも必ず笑える場面があります。ただ笑えるだけでも幸せなのですが、時折ご本人の鋭い視点や人生観が挟み込まれ「楽しかった」の一言では済まない引っ掛かりやフレーズを読後に噛みしめることができます。
訃報は悲しいけれど、こんなに素敵な作品たちを世に残してくれてありがとうと改めてお伝えしたい。以下、印象的な作品を簡単に。

『奇跡の水虫治療』
16歳の水虫根絶奮闘記。万が一にも自分が患ったら絶対この治療法を思い出すし、思わず試す気もする。

『メルヘン翁』
祖父の葬式。人の死は憂い悲しむもの、そんな世論を吹き飛ばしてくれる。

『意図のない話―「青山のカフェ」』
突然耳に飛び込んでくる他者のしょうもない発言が、人の感情を動かし、人生のキーポイントになる場合もある(本っ当にしょうもない発言)。

『結婚することになった』
娘だけがそっと気付く父の心の内。つい自分と重ね、久しぶりに父と連絡を取ろうと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学(エッセイ)
感想投稿日 : 2018年10月4日
読了日 : 2018年10月4日
本棚登録日 : 2018年9月1日

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