日本の首脳陣たちが「もう戦争しかない」と思ったのは何故か。日清戦争~太平洋戦争の動乱と背景を解説。
中高生への講義がもとになっているので、対話形式で進み易しい語り口で頭に入り易いです。日本側でもなく他国側でもなく、あくまでも中立の視点なので俯瞰的に近代史を捉えられます。
かつて受けた学校の授業では、戦争による多くの犠牲のみに焦点が当てられ「戦争は悲しみの連鎖だ」「戦争は悪だ」といった狭い視野でしか学ばなかったように思います。しかしこの本では戦争は多くの犠牲を伴うものと十分知っていながらも「戦争しかない」という結論に至った“過程”を学ぶことができます。背景には、当時の世界における日本の立場や経済事情などを筆頭に「いかに自国の立場を優位にするか」といった思惑があり、それらが複雑に絡み合った結果ですが、一つ一つ要点を噛み砕きながら進行するので苦になりません。
最後まで読み、時代の流れのなかで各国政府が「戦争を選ばざるを得なかった」理由が浮き彫りになります。そしてその余波は現代にも続きます。ではこの先、過去の経験を得た私たちは「戦争をしない」選択をし続けられるだろうかと問われると、個人的には全く自信が持てません。今後も世界情勢や政府の意向によって、戦争へ傾く時が訪れるかもしれないと内心不安に駆られます。
と嘆いたところで何も始まらないので、広い視野を持つこと、多角的にものごとを捉えること、自分の望む未来のために一票を投じること、そして情勢は刻々と変化する、だからこそ学び続けることが大切だと思いました。
- 感想投稿日 : 2017年6月10日
- 読了日 : 2017年6月1日
- 本棚登録日 : 2017年5月19日
みんなの感想をみる