エレンディラ (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (1988年12月1日発売)
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本棚登録 : 2274
感想 : 225
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「大人のための残酷な童話」として描かれた7篇の短編集。
童話といっても登場するモチーフは死や殺人、人間の欲など黒々としたもの多数。平穏な日常に舞い込んだ突然の非日常に遭遇する住人たちが良くも悪くも人間臭く、出来事も悲喜交々で味わい深いものばかりです。印象的な作品だけ簡単に。

『大きな翼のある、ひどく年取った男』
自宅の中庭でペラーヨ夫婦が発見したのは、汚れた翼を携えた見窄らしく惨めな老人だった。ひとまず鶏小屋へ閉じ込め、しばらくしたら見世物にし、いつしか手に余る存在に。人間の欲とミーハーさがよく表現された一編。妻エリセンダの「やれやれ」な安堵のラストが印象的。

『この世でいちばん美しい水死人』
海からその村へ流れ着いたのは、うろこのような皮膚で覆われたよそ者の大男の死体だった。水死人の生前の姿をとりとめなく妄想する女たち、やがて男たちの心をも動かし、村民の都合の良い妄想はやがて村全体に大きな変化をもたらす。思い込みは時として事態を好転させる原動力に。

『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』
少女エレンディラは不注意で館を全焼させてしまう。借金返済のために祖母は男たちに声を掛け、エレンディラの若さと体で支払わせる。ある日エレンディラに少年ウリセスが恋をした――。
可憐で純真無垢なエレンディラが、読み進めていくたびに生命力を帯び、力強く躍動していきます。ラストでは軽やかに舞うような後姿を想像し思わず頬が緩みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2017年12月19日
読了日 : 2017年12月10日
本棚登録日 : 2017年12月19日

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