ツチヤの口車 (文春文庫 つ 11-10)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年2月8日発売)
3.58
  • (19)
  • (26)
  • (47)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 326
感想 : 20
4

お茶の水女子大学の教授であり、哲学者である土屋賢二が
週刊文春に連載しているユーモアエッセイをまとめたもの。

こういったジャンルの本を読むこと、
しかも自分で購入してまで読むことは
自分にとっては極めてまれなことであるが、
最近読んだ森博嗣の日記本の中で土屋賢二の名が出てきたため
たまたま土屋賢二に対して比較的関心が高い状態だったことと、
そんな状態のときに、伊坂幸太郎の新刊を探しに行って
たまたま土屋賢二の新刊が出ていることを知ったこと、
などの偶然が重なって手にとることになった次第。

森博嗣との共著である「人間は考えるFになる」以外には
土屋賢二の文章を読んだことは今までなかったが、
まえがきを読んだだけでその魅力の虜となってしまった。

とにかく面白い、というかおかしいのだ。
つまり笑える、ということ。
本を読んでいて笑うことなど滅多にないのだが、
この本を読んでいると、思わずくすっと吹き出したり、
そうでなくてもニヤリとさせられたりすることが多かった。

さすがに哲学の教授なだけあって、
論理というものを巧みに使いこなしている。
たまに意味不明の理屈や、不可解な飛躍、
まったく無関係の事柄などを持ち出してきて、
それによっておかしさを生み出している。
なんだか簡単に書けそうなふざけた文章のように見えるが、
実はこんな文章はそう簡単には書けないはずだ。
凄いのに凄く見せない、というのも、実は凄いことだ。

周りが女性ばかり、という環境で生活されているせいか
女性に関しての洞察や描写は真に迫るものがあり、
特に「驚異の反撃法」でフィクションとして紹介されていた
妻の理不尽な反論にやり込められる夫の描写には
とてもフィクションとは思えない生々しさがあって
土屋先生の家庭での虐げられぶりの片鱗が窺え、涙を誘う
(とは思わず、思い切り笑わせてもらった)。

あと、いくつかのエッセイの最後についているイラストだが、
あれが意外に切れ味が鋭かったりするから要注意だ。

こんなに面白い文章は他ではあまり読めないので
これから過去の著作も遡って読んでいこうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 土屋賢二
感想投稿日 : 2012年5月7日
読了日 : 2008年2月16日
本棚登録日 : 2012年5月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする