ベトナム戦争のさなか、従軍している日系人カメラマン・ミナミと、戦闘マシンとして鍛え上げられたベトナム人少女の淡い恋心が(とりあえず)お話の中心である。
泥沼化するベトナム戦争の中で、すっかり狂気にとり憑かれている米兵たち。のほほんとそれにぶら下がっているミナミだけが、なぜか少女に殺されることなく生きながらえる。それはなぜなのか…?と問ううちに、夥しい死体が積み上げられていく。
それにしてもなぜいま、ベトナム戦争なのだろうか?
著者はベトナムの風俗や歴史に関心が強く、ベトナム戦争の構図にも詳しいようだ。そのベトナムのお話を通して人間や戦争の異常心理、不条理を描こうとしているのかも知れない。
一方、本の帯や雑誌のアオリコピーは「世界一かわいい、ベトナム戦争」とか「超絶ラブストーリー新連載!」といった具合だ。
お話の異常性に比して、ちと脳天気ではないか?
近ごろのマンガ雑誌(コミック誌、というべきか)を手に取ると、内容は目を覆わんばかりだ。暴力とセックス、荒唐無稽な力や、シリアスな場面でも突然出てくるギャグ、現実とは乖離した「なんとなくなんとかなっちゃう」あり得ないユートピアばかりだ。
こんなのを読んでいたら、それこそどうにかなっちゃいそうだ。否、既にどうかしている日本人がこういうものを求めているのか…。
この本の作者の抱いているモチーフが、上にも書いたような人間の矛盾を描き出すことにあるのか、それともご多分に漏れず単に暴力(血)の横溢を描きたいだけなのか、そのへんはよくわからない。
だが、今という時代(大衆)がだんだん、人の血や死を大ごとと考えなくなっているのを感じるのである。
- 感想投稿日 : 2019年6月12日
- 読了日 : 2009年11月23日
- 本棚登録日 : 2009年11月23日
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