野山の生き物への関心が高じて、“趣味で”狩猟を始めてしまった著者のモノローグ。
ワナ猟をする同僚との出合いから始まって、狩猟免許の取得、ワナの構造や仕掛け方、取れたシカやイノシシの処理や料理(シカのフィレーの刺身とかボタン鍋の旨そうなこと!)、保存の仕方に至るまで、ひととおりのマニュアルのような構成になっている…これを読んで真似できるようなものではないけど。
ワナにかかったシカやイノシシを鉄パイプで“どつく”(とどめを刺して絶命させる)ようなシーンにはどうしても違和感を抱かざるを得ないが、それも「狩猟は残酷だという人がいるが、スーパーで売っている肉の来し方に思いも馳せずお金だけ払って得ることの方が残酷だ」とか「自分が暮らす土地で動物を取り、その肉を食べて自分が生きていくプロセスすべてに自分の責任がある」という主張に触れると、ナルホドと思う。
“趣味”とはいえ、自然と向き合うことで得られる絶妙なバランス感覚がそこにはある。
猟期は冬場の三カ月間ほどで終わるが、話は尽きない。
自宅裏山の倒木を使った薪ストーブのある生活。獲った肉をじっくり燻製にする。山菜や川魚をとる。潮干狩りでマテ貝と駆け引きする。これでもかと自然と遊ぶうちにまた秋になり、猟期がやって来る。
著者の「どう?いいでしょ」とほくそ笑む顔がなんとなく浮かんできて、たいそう羨ましい気持ちにさせてくれる本である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
アウトドア
- 感想投稿日 : 2019年6月12日
- 読了日 : 2010年1月29日
- 本棚登録日 : 2010年1月29日
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