本書は橋下徹氏の教育改革について批判的立場で論じたものである。
筆者は橋下氏の教育改革について、「『無反省な新自由主義』と『むき出しの新保守主義』が合体したものだと位置づけることができる p56」としている。前者はイギリスでの失敗例があるにも関わらず、後者は国家主義の過度な強調という形で、それぞれ推し進めているのが橋下氏の教育改革というわけだ。それに対して筆者は、伝統的に大阪では障害者や外国人も含めて多様性に基づいた教育がなされているのであり、その伝統を壊すのではなく、それを踏まえた上で教育改革を考える必要があると主張する。
また、批判的立場で書かれているという点は考慮しなければならないものの、橋下氏の教育改革について簡潔にまとめられていたので、それについて知りたいと思っていた自分の希望は叶えられた。維新の会が出した条例案と最終的な妥結案との相違点など、そのおおまかな流れが掴める。
それにしても、大阪の学校が(在日韓国人に限定せず)在日外国人や障害者に寛容であるという事実には驚いた。問題はその良さを引き継いで、いかに新たな教育を構築していくかだ。グローバルの人材育成や学力に一辺倒なるのは確かに問題だが、大阪府民の学力・モラルなどに問題がないわけではない(大阪の街はやはりマナーが悪いと個人的には思う)。
ではどうするのか?大阪の教育が上手くいっているとはお世辞にも言えない気がするのだが、そこをどうするのか?紙面上の制約もあるし本書の趣旨も新たな意見の提示ではないのかもしれないが、その具体的方策・提案が是非とも聞きたいところ。
- 感想投稿日 : 2016年1月19日
- 読了日 : 2016年1月19日
- 本棚登録日 : 2015年12月16日
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