獄に消えた狂気: 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件

著者 :
  • 新潮社 (2011年8月18日発売)
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感想 : 9
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滋賀・長浜で起きた幼児殺害事件の犯人である鄭永善。彼女は統合失調症を患い、いわば"二つの"顔を持つ。そんな"もう一人"の彼女が犯した、罪のない二人の幼児を殺害するというこのどうしようもなく重い罪、そしてそれによってもたらされた悲劇を、それを取り巻く人々、そして何より鄭永善と彼女の病を描くことであぶり出していく。
中村うさぎの書評を読んだことがきっかけで手にした本。統合失調症とはどんな病気か、薬で症状をどの程度抑えられるのか、そういった記述はこの本では特になく、鄭のありのままの姿が淡々と記される。病が進行した彼女は、もはや"元の"自分をほぼ完全に失ってしまったかのよう。もう一つの世界を生きる彼女に現実世界の罪と向き合わせるというこの矛盾、遺族のやり切れない思いはどこにどうやってぶつけたらいいのだろうか。法はなんの解決にもならない、それでも法はなんらかの判断を下し、裁かなければならないのだ。
罪を犯した時点で既に永遠に癒されることのない悲しみが、彼女の病によって増幅される。出口のない迷路のようなこの悲劇、そのありのままの姿をこの本は描き出している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイルポ対談
感想投稿日 : 2013年5月25日
読了日 : 2013年5月25日
本棚登録日 : 2013年5月20日

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