Amazon からのレビューより
日本の伝統仏教のゆくえを考える上では最重要クラスの対談。方や浄土真宗本願寺派の現役門主(本願寺住職)、方や「がんばれ仏教!」とお寺やお坊さんに対しハッパをかけることに熱心な人気の学者さんと、なかなか興味深いとりあわせ。そして、その期待大のカップリングは見事に成功し、現代仏教、とりわけ真宗の現在について、非常に示唆深い言葉がかわされる場と相成った。
特に素晴らしい印象のあったのが、大谷門主の言葉。なんというか、とてもバランス感覚の優れた人だと思う。「教え」の形骸化する現状を反省し、「ハンドル」(≒教義)と「エンジン」(≒信仰体験)の両者をともに作動させねばならないとし、他者や世界への無限責任に耐えられず「他力」におまかせする自己を見つめながら、しかしなお、個々人ができる範囲での慈悲の実践を強調してやまない。現代における伝統仏教の苦境と存亡の危機を誰よりも痛感しながら、そのもてる可能性に対して、誰よりも真摯で前向きある。
そして、その稀有なバランス感覚を支えているのが、全国で地道に活動している寺院や僧侶、あるいはその予備軍となる若い仏教者たちへの、根強い信頼なのだろう。寺院を新しいかたちで開拓してこそ改革はなる!と気を吐く上田氏に対し、その点は認めつつも、だが本源的に大事なのは、まずは目の前にいる檀家(門徒)さんたちとの魂の交流を通して、僧侶ひとりひとりが、個の苦悩から世界の苦悩へとひらかれていき、その世界に向き合う自分を磨いていくことこそが、仏教再生につながるのだと述べる。めったやたらと「改革」の旗振りをせず、まずは地道なところから確かな変化を、というその意志は、実に説得的だと思う。
- 感想投稿日 : 2010年12月8日
- 読了日 : 2010年12月7日
- 本棚登録日 : 2010年12月7日
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