ひさびさに、しかもレンタルで金を払って見た。
随分昔に見たので、記憶がなくなっていた。
状況を説明するための語りが全編にわたってなされ、それがかなり饒舌でリズムがよく、聞いているだけで心地がよい。
ストーリーはかなり深刻な生存競争で、人間たちが団地やニュータウンと呼ばれる山を削ったあとに作られる街に元々住みついていた『原住民』であるところの狸に代表される動物たちがスミカを追われ、いかにして人間に抵抗し、どのような手段によってそれはなされ、どんな末路をたどったかという顛末までを描く。
単純で明朗な狸たちはなにかとすぐに踊り出したり、コミカルでわかりやすく、見ていて気持ちがよい。立ち向かうべき問題がシビアであるからこそ、明るく振舞っているとも言えるが、元々動物の本能の単純さを表現してのことかもしれない。
全体的にかなり絵が動く様子は、アニメ映画でも屈指のレベルで、CG黎明期において使用されたものの違和感もなかった。
妖怪の場面や舟の場面なんかは、新時代の浮世絵を作りたかったのではないか、と感じ、なにか歴史的名作の現場に立ち会ったような晴れ晴れとした気持ちになった。
また、蛇足ではあるが、
政治の構造を理解するのにかなりいい映像ではないかと思われる。ある、文明が未発達な集団に、文明を無理やり押し付けられ、拒否できないまま、標準化の波にとらわれていく者たちが、決起して反乱を決意するが、内部分裂し、過激派が出現し、居直り派と対立、個人主義がまかりとおり、しだいになし崩し的に、文明を受け入れる。
ぼくは、はっきり言って、自然を守る、という綺麗事は嫌いだ。自然的なものは好きだが、いますぐ家を捨てて野に入り、野生の生活はおくることはできない。
この映画は、狸の側に「文化」があり、日本人にはすでに「文化」をなくし、代替可能な文明の平準化によって支配された名無したちに、次々と日本の文化や歴史を破壊することに警鐘をならしているのではないか、と思えた。いまさらハンバーガーも遊園地も撮り壊せないが、なにかできることがあるのではないか、という思いが湧き出た。
- 感想投稿日 : 2012年2月22日
- 読了日 : 2012年2月21日
- 本棚登録日 : 2012年2月21日
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