機械との競争

  • 日経BP (2013年2月7日発売)
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テクノロジーは雇用を破壊する。

コンピューターは雇用に影響を与えず、近年低迷しているのではないか、と言われていたが、むしろ逆だ。発展が早すぎて人類が進化に追いつけていない。
コンピューターの発展は雇用体系を大きく変え、失業を起こしている。
労働力を節約する手段が、その労働力の新たな活用先を見つけるペースを上回ることで、失業率が高くなっている。

技術の発展の恩恵は存在がするが、誰もが技術の恩恵にあずかれるという保証はどこにもない。むしろ大半の人が恩恵を得られるかどうかという法則すら存在しない。
現にアメリカの平均賃金に変化はなくとも、中央値は下がっている。テクノロジーの発展により格差が広がり、富めるものは富み、貧しきものはより貧しくなる。


富めるものと貧しきものの差は何かが言及されている。

・スキルの高い労働者 ↔︎ スキルの低い労働者
これからの時代を生きぬくにはSTEAM ( Science , Technology , Engineering, Art , Mathematics )らしい。
仕事を奪われると嘆く人は、コンピューターにもできる仕事しかしていない。

・スーパースター ↔︎ 一般人
コンピューターの発展により誰でも世界に発信できることや、様々なもののコピー可能なことが大きな影響を与えている。
現在 ( 2007) の アメリカの0.01%の人間が、アメリカの6%の資産を持っている。

・投資家 ↔︎ 労働者
労働者は機械に変わるが、投資家は変わらない。投資家は労働者の賃金ではなく機械に投資するようになる。


これから我々はどうするべきか、筆者は提案している

・教育
1.とりあえず先生の報酬を増やし、よりよい人材にとって訴求力の高いものとす2.る。
2.教師の終身在職権を剥奪し、裁量制とする。
3.学生の指導と、試験・資格認定を切り離す。学校は学生の募集や評判や社会的地位向上を考えるのでなく、教育を重視するべき。
4.義務教育の時間を増やす。(そして経営学やプログラミングなどを学ぶ)
5.スキルを持つ移民の積極的な受け入れ行う。

・企業家精神
6.全ての高等機関で企業と経営の基礎を教え、起業家層を育成する
7.起業家ビザを作り、企業家精神の発展に努める
8.起業の手間を簡略化。意見交換の場も揃える。

投資
9.通信、輸送インフラの強化に投資する(アメリカはインフラが弱いらしい)
10.基礎研究や、政府の重要な研究機関への予算を増やし、無形資産や組織改革を新たな研究対象に設置する。

法規制
11.労働市場の流動性を保つ。解雇が処罰されるとなれば、企業にとっては雇うことがリスクになる。
12.技術の導入より人間の雇用の方が相対的な魅力になるような状況を作り出す(これは雇用の観点なので、僕としては懐疑的である)
13.福利厚生と企業を切り離し、市場の流動性を高める。医療保険やその他の福利厚生が雇用に義務付けられていると、転職や起業がしづらくなる。企業を考えていても、医療保険がなくなるかと思うと踏み切れないように。
14.新しいネットワークの規制はゆっくり行う。実験段階の、とりわけ新しいプラットフォーム作りに関しては、最大限試行錯誤や実験ができるようにするべき。
16.金融サービスに対して供給されている補助金を削減する。「金融機関が大きすぎて潰せない」と政府に存続を保障されることで、金融サービスに多くの優秀な人材とテクノロジーが吸われてしまう。
17.特許制度を改革し、審査官を増やす。
18.著作権の保護期間は伸ばすべきではない。新しいアイディアは既存のアイディアの掛け合わせで生まれるから。


日本はアメリカを目指してすらいないが
日本より教育が進んでるとされているアメリカでも、教育に関して問われているのだ。今こそ改革の時、ということなのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年5月25日
読了日 : 2017年5月24日
本棚登録日 : 2017年5月24日

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