絵を描いて生きていきたい、上手くなりたい、という盛んな闘志が、進めども進めども空回るさまは苦しい。特にロシア留学のくだり。そもそもりんの信仰心とは何に由来するのかは語られないほど、彼女の信仰心は神に捧げられたものではなく、絵を描くことに捧げられたもの。芸術としての絵画を学びたいりんと、信仰と結びつく聖像画を教えたい修道女たちとの齟齬は当然。「師が千言を費やそうと、己の道は己の足でしか歩けない」。気づきの道は遠くて苦しい。
りんの人生だけでなく、明治初期の美術教育界隈の情景や、なじみのないロシア正教会と日本の関係について読むことも興味深かった。いつか私たちの時代も、こうやって描かれることがあるのだろうか。
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- 感想投稿日 : 2023年3月29日
- 読了日 : 2023年3月29日
- 本棚登録日 : 2023年3月29日
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