小説家を目指す脚本家のギルは婚約者と彼女の両親とでパリを訪れるが、
ある晩、彼が憧れてやまない1920年代のパリへタイムスリップをする。
パリの街並みを小粋に瀟洒に描くウディ・アレン作品。
作中、ギルが好む「街を歩く」という行為には、
観光地から観光地へ渡り歩いてスケジュールをこなす時間的速度や、
先人の作品に結論めいた解釈を与える思考的速度といった、
ある種の「速度」へのさり気ない抵抗が込められている。
ゆっくりと歩くスピードで文字通り足跡を辿ることで初めて、
先人の息遣いを感じ、思いを馳せることができるようになる。
そして、そのうえで、ギルがアドリアナに放つ一言に集約される
「(いつの時代だって)現在が不満なんだ。それが人生だ」といった眼差しを得る。
時代が人を創るのではなく、人が時代を創る。
そんな人生観を、押しつけがましくなく描く。
お見事。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ヒューマン
- 感想投稿日 : 2013年8月18日
- 読了日 : 2013年8月17日
- 本棚登録日 : 2013年8月17日
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