LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2016年1月22日発売)
3.73
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本棚登録 : 1071
感想 : 90
3

藤堂比奈子シリーズ第四弾、「LEAK リーク」
今作もまた猟奇的な殺人者と比奈子と愉快な仲間達が大活躍だ。過去の事件にて繋がれた環境が崩れないのと、脇役が存在しない事がこのシリーズが愛される理由だろう。
....."地味系代表清水の声 {僕もいるよ(小声)

今回の死体は超重量級だ。物理的な意味で超重たい死体の原因は、体内に大量の小銭が詰め込まれている為だった。ただでさえ異質なこの事件は後に同様の手口を使った連続殺人、通称「リッチマン殺人事件」としてガンさん率いる比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」の頭を悩ませる事となる。

同時に、太鼓屋の絹おばあちゃんと跡取りの佐和、その息子遥人のサイドストーリーも進行するが勿論こちらも目が離せない。絹さんの気高く、しかし孤独で切ない過去が少しだけ垣間見れる。家族の様な固い絆で結ばれた彼女達を見ていると、何故か私も人に優しくなれるような気がする。優しさは伝染するのだろう。

大好きな解剖医の死神女史は相変わらず検死後にホルモンを食べに行くハードボイルドさだ。
と、愛を語るが、何度も言うが愉快な仲間たちの緩さに釣られると凄惨でグロテスクな描写に打ちひしがれるのでお気を付けて...んふっむふふ。
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今回はかなり凝ったプロットだったように感じた。「リッチマン」の正体もだが、背景がやや複雑だ。ネタバレ防止で詳しく語れないのがもどかしいが、名前と続柄はしっかり認識しておきたい所だろう。
限られた新規人物達に着目してしまうのは仕方ないので共に推理を楽しむーーなんて比奈子と読者の愛の共同作業は残念ながら見込めないが、今作もしっかり絶望と憎悪を同時に背負う悲しき業に囚われた犯人に心をキュッとさせられて欲しい。
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今回は警視庁 合同捜査本部にて資料係に徹する厚田(ガンさん)班だったが、やはり最後は比奈子の「思い遣り」の人柄がバラけたピースを集結させる。
比奈子は確実に通った道で欠片に糸を通しているんだよなぁ。最後に糸をピンッと張ると欠片が集結して大きな塊に変貌する。まるで磁力だ。
最初は好きになれなかった比奈子が気付けば今は大好きだ。野比先生との安いラブストーリーにアンチ精神働かせていたのに今回はそれが無かったので余計に悶々している。やれやれ、つくづく私という生物は身勝手な生命体だなと痛感した。

しかし、規模の割に盛り上がりの沸点には至らなかった微妙な不完全燃焼に苛まれている。どうやら今作は次作への大きな通過点なのだろうか...、エピローグにあたる謎の人物と前作「CUT カット」の犯人との文通に心がざわめき立ち、既に意識はそちらに向いてしまっている。

最後に、東海林ぱいせんのくしゃみが「へべちっ」では無くなり、シンプルなおっさんのくしゃみだったのが地味に悲しい。
〜「へべちっ」よ永遠に〜
私の心の中で生き続けるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2022年6月24日
読了日 : 2022年6月24日
本棚登録日 : 2022年6月24日

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