凶犬の眼 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2020年3月24日発売)
3.92
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本棚登録 : 2560
感想 : 220
5

※前作のネタバレを含んでおります。未読の方はお控え下さい※



孤狼の血にて日岡がガミさんの意志を継いだラストに鳥肌を立てて早数ヶ月。ハードボイルド大上仕様な口調で締めくくった日岡の本作でのスタート地点、マル暴でバリバリかと思いきやまさかの駐在所勤務。(前作のエピローグ前に記載があったようですが私の狭い記憶中枢からは抜け落ちている。)
そんな〈無為に等しい時間〉を過ごす日岡の前に、世間を騒がす新たな暴力団抗争の火種となるであろう超重要人物「国光寛郎」が現れ取引を持ち掛けられる。まぁ、この作品の魅力は解説の吉田大助さんたる方が実に的確にわかり易く説明してくれているので割愛。

一言で言うなら最高。
国光が親父である北柴に対して、「人に惚れる」ということを日岡に語るシーンにはハッとさせられた。色恋に意義を無くした私だが、人に惚れる事が無関係になった訳では無いと、むしろそれは理屈や理論で制御できるものではないと気付かされた。
惚れた人間、いました。私にも、います。
なんて浅い所で理由も無く溺れているんだろう、地に足着く状態なのにわざわざ膝を曲げてジタバタしている自分が恥ずかしくなった。

正義や仁義はよくわからない。
しかしこの作品内で、二つの違いはしっかりと現れており、これがこの現代の何に当て嵌るか皆目見当はつかないものの、何故か引き寄せられる物があった。恐らくこれは憧れに近い感情なのだろう。
「自分が信じた物を貫く」
良くも聞こえれば悪くも聞こえる。
そして実際、「誰の」「何の」基準なのか、良く見えたり悪く見えたりするものだ。
しかし、日岡や国光初め 志乃の女将 晶子さん 今は亡き大上刑事。彼らは皆、自分が信じた物を信じ 最後までそれを貫き通していた。己を守る自己中心的な正義とは違う、信じ惚れた人間に尽くす仁義。誰もが一切後悔などしていない。
なんだろう。もう、月並み+語彙力爆発で申し訳ないのだが、本当に本当にかっこいい。
自分とは違う。それだけは確実に感じ取ることが出来た。完全に憧れだ。惚れている。

明確では無いが、このよくわかっていない昂った感情は忘れたくないですね。
人生が自分を主人公とする壮大な物語だとするなら、そしてその脚本を自分が作るのならば、私はこんな主人公がいいなぁ...と、そう思う。思うのはタダですね。

いやぁ面白かった!!最高だーい!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2021年8月11日
読了日 : 2021年8月11日
本棚登録日 : 2021年8月11日

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コメント 2件

にゃんちびさんのコメント
2021/08/11

最近刑事物にハマりつつあり、柚月裕子さんシリーズ、読んでみたいと思っていたので、NORAさんの感想を読んで確信に変わりました。読みます笑

NORAxxさんのコメント
2021/08/11

にゃんちびさん、こんばんは^ ^
刑事もの超えてヤクザ物と化してる気もしますが...(笑)
是非「孤狼の血」から読んでください喜びます!!!私が!!!←

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