ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

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  • みすず書房 (2018年12月15日発売)
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Covid19が確認されるちょうど1年前に上梓された本。
この本からわかることは、ウィルスのことをわかった気になってはならないということだ。
Covid19は、どうすれば感染が防げるのかはわかっているが、ウィルスそのもののことはわからない。
解決策がわからない問題が難しいのではなく、どうすれば解決するのか極めてはっきりわかっている問題のほうが難しいのだ。

P3 ウィルスは独力では増殖できない。ウィルスは、遺伝情報を持つ核酸と、それを覆うたんぱく質や脂質の入れ物からなる微粒子にすぎず、設計図に従ってたんぱく質を合成する装置は備えていないからだ。

P20 致死的な傷の場所が異なるウィルス同士では、互いに傷を直して生き返ることができる。ウィルスの死は、生物の死の概念を超えていると言えるだろう。

P182 高い電波力・致死率の病気を起こすウィルスは、宿主の生物が高密度に集まっている環境でなければ存続できない。その意味で、これらの病は、都市化や畜産業の発展などへ舵を切った人類の宿痾と言える。今後もさらに人口が増え続ける以上、毒性の高い病原ウィルスが出現するリスクはさらに高まっていくだろう。

P203 腸内は、皮膚の表面と同様に体の外であると考えることもできる。【中略】今後、我々の体内のウィルスが、我々の健康や病気に果たす役割が明らかになっていくと期待されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2021年8月14日
読了日 : 2021年8月14日
本棚登録日 : 2021年8月14日

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