相手を貶めて印象付ける「ヘイト・ポスター」やカリカチュア。その醜さを通じて人種差別と憎悪の歴史をあぶりだす。
断片的に知っていることであっても、これだけの素材が集められていて、かつ手に取りやすく通読できる本は大変貴重。
図版に頼り過ぎず内容もしっかりしていて、淡々とだが無味ではなく書かれている。ブックデザインも絶妙によく考えられていると思う。
[more]<blockquote>P023 いとも簡単に人は人を殺し殺され自分も殺す。復讐心がなくても人を殺せる。人間を「害虫」などの「殺しても心が傷まない存在」に例えそれにリアリティを与えれば、いとも簡単に殺せる。
P026 本質は何も変わらない。見下せる人間がいることによって活力を得る人間がいる、ということ。
P064 大事なことだが自分はかかわりたくない、口先だけのリベラル=NIMBY(自分ちの裏庭は勘弁してくれ)
P075 マジカル・二グロ=驚異的な能力を発揮するとともに自己犠牲芯が強くひたすら白人に尽くす。そしてたいてい死ぬ。(exグリーンマイル)
P203 イエローキッド、ダーキー・・「バカにしてかわいがる」両義性がアメリカ文化の中にありそうだ。
P285 ヘイト・ポスターにおけるこうした表現(身も蓋もない直球表現のもの)は。ナチスに限ったことではない。どこの国も事ヘイト・ポスターに関しては同じ土俵で戦ってしまうのが常。これがヘイト・ポスターのDNAと言える。言ってみれば、デザイン性のないdesign、いや、デザインを必要としないデザインと言える。しかしこの相手の人間性を挫くための醜い表現は、自分の醜さの裏返しでもある。そこに気づかないのが、ヘイト・クライムを繰り返す人々の特性である。
P336 「天罰が下った」「因果応報」「正義は勝つ」・・・こうした疑似合理的な理由が差別の温床となる。
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- 感想投稿日 : 2018年10月18日
- 読了日 : 2018年9月4日
- 本棚登録日 : 2018年10月18日
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