訳者による序文と末尾の解説両方がついていて、著者がストイックな思想家などではなく金満家で派手な生活を好んだ多作の流行作家だということを踏まえて読むようにできている。自己啓発本として内容を真に受けるより、アーノルド・ベネット論として読むと興味深い。
P021 睡眠というのはある程度は習慣の問題であり、怠惰な生き方のほうにこそ問題があるからだ。たいていの人は、他に楽しみ方を知らないので、できるだけ長く眠っているのだと私は思う。
P023 仕事以外の何かをやるという点に関しては、朝の1時間は夜の2時間に匹敵するのだ。
P031 明日の時間を今、浪費することもできない。なぜなら、それは「明日のあなたのために取っておかれている」からだ。
P037 人々がとりつかれている時間に対する思いを分析してみると、それは主に焦り、期待、願望、欲求のようなものであることがわかる。これが原因となって、人々は絶えず不快な思いをしているのだ。
P049 なに、ただ始めさえすればいいのだ。何もことさら魔法のような始め方があるわけではない。
P129 精神を統治する際の最も重要な要素の一つは、まさにこの努力感なのである。一方ではやり遂げたいと思い、他方ではやりたくないと思う。心の中の葛藤が大事なのである。よい小説を読むときにはこういう葛藤はまず起こらない。想像力豊かな詩を読むときには、小説を読む場合よりもはるかに頭を使うことが要求される。
P146 ひとつの日課から他の日課へわざと時間をかけてゆっくりと移ることが、結構いい一時しのぎになる。5分間くらいは何も考えずにぼんやり過ごすのだ。言い換えるなら、時間を無駄にしていると十分意識しつつ、5分間を無駄に過ごすのである。
- 感想投稿日 : 2021年4月29日
- 読了日 : 2021年4月24日
- 本棚登録日 : 2021年4月29日
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