勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年3月10日発売)
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「勉強が気になっているすべての人に向けて」という書き出し始めの言葉となっている。勉強が深まると周りとの共感性のノリが悪くなりバカができなくなり、今までの自分を喪失し、最終的に新たなノリを獲得するという。
英語を勉強し始めてちょっとしゃべれるようになったときに、英語も日本語もかえって下手になる感じを言語化してくれているよう。
言語習得とは、ある環境において、ものをどう考えるかの根っこのレベルで「洗脳」を受けるようなことということ、ユーモアは何か新たな「見方」をその場に導入するコード変換という指摘にはうなずける。教師は勉強の有限化をしてくれる存在、読書は知らない部屋にバッと入って他の位置関係を把握するようなイメージ、勉強とは別の考え方=言い方をする環境へ引っ越すなど心躍る表現で前向きになれる。
自己分析の方法として「欲望年表」、他人に見られたら不審に思われるコンテンポラリーダンスみたいな動きもやってみよう。
言葉をリズム的に扱うことを面白さとして、俳句は絶妙な瞬間をとらえるスナップ写真、短歌は主観的、心情的な性格が強いとし、リズムと意味の両面で言葉選びができる、詩は言語それ自体を自由にしようとするジャンルであること、日常生活を小説的にとらえるということ、などを実践編で紹介している。言語と欲望の問題に踏み込む内容とあとがきで触れており、読みきれていない部分もあるので何回か読み直す必要がある良書。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学
感想投稿日 : 2024年2月2日
読了日 : 2024年1月20日
本棚登録日 : 2024年2月2日

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