人は目にしたものに耐えられないとき、本能的にその記憶を葬ろうとする。どうして自分は女学生を見捨てて逃げたのか。僕は原爆のあの日に耐えきれず、記憶をすりかえ自分の名前すら忘れてしまった。一発の爆弾が多くの理不尽な死をもたらし、生き残った人たちをも苦しめ続ける。投下の直前まであった人びとの確かな暮らしとあまりにも悲惨な死。それを忘れてはならないと思えたとき、僕はいったん死んだ自分の心を取り戻しはじめた。広島生まれで被爆二世の朽木祥さん、物語に登場するほとんどの人びとに実際のモデルがあるそうです。物語の修道士の言葉にもありましたけど、この大切な記憶をあの日を知らない私たちも自分のものとして分かち持ちたいものです。図書室に入れたので、子どもたちにさっそく紹介したいと思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
児童文学
- 感想投稿日 : 2012年9月10日
- 読了日 : 2012年9月9日
- 本棚登録日 : 2012年7月10日
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