サピエンス全史 下: 文明の構造と人類の幸福 (河出文庫)

  • 河出書房新社 (2023年11月3日発売)
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認知革命、農業革命、科学革命。
ホモ・サピエンスは、認知革命において「虚構」を獲得したことで、唯一のサピエンス種に、そして地球上生物において支配的なポジションを確立した。
狩猟民は定住を始め、富の貯蓄が可能な農業革命を迎えることで、種としての繁殖数が爆発的に伸びた。貨幣、帝国、宗教(イデオロギー)と結びつき、サピエンスの繁栄は勢いを増す。そして、大航海時代や宗教革命の到来により、神の文脈では説明できない事柄が明るみに出てきた。この時において、無知を前提とする科学革命が起こる。これまで、テクノロジーが国家と結びつくことはなかったが、帝国とテクノロジー、そしてこの時代に萌芽した資本主義が結びつき正のフィードバックシステムが作られたことで、科学技術はそれまでとは比べ物にならないスピードで発展していった。
科学発展の産物として、人類はその歴史を終わらせることができる力を持ち得ることになった。しかし、その力の行使は集団自殺を意味し、これまでの所、地球規模に及ぶ心中は起きていない。(勿論、その日が明日である可能性はまだある)
そして、その発展は地球史上、また人類史上のこれまでの進化とは全く別の次元に到達しつつある。
これまでは、人類が生物種に影響を与えられる範囲としては、種の絶滅か交配選択による進化圧の加速程度であり、生物のコードであるDNAを随意に操作することはできなかった。しかし、ゲノム解析技術、サイボーグ技術、そしてコンピューティング技術の発展によって、新しい生命の創造、そして人類を超越する知能の創造が可能となった。
技術の発展は必ずしも幸福と相関があるわけでは無い。人類とは全く別次元の存在を生み出したことが、未来にどのような影響を与えるのかは分からない、分かるはずもない。(チンパンジーは自分達が、将来、あるチンパンジーの肖像画が印刷された紙をありがたがって持つ世界を想像できないのと同様に。)

我々人類に残された、向き合うべき問いは「私たちは何を望みたいのか?」であろう。

また、個人的に長年の疑問であった「幸せホルモンに浸かれば幸福なのか」に対する答えというかヒントが得られた。ホメオスタシスにより、幸福ホルモンに永続的に浸かることを良しとして作られていないらしい。そして、その気持ち悪さが描かれた作品も知れたので、読んでみようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月17日
読了日 : 2023年12月17日
本棚登録日 : 2023年11月12日

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