崩れ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1994年10月5日発売)
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感想 : 46
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初めて幸田文さんの作品を読む。
幸田さんはどちらかというと
家庭での事を書くイメージが強かったため、
初めて読むには違う作品を読んだ方が
彼女の個性をつかめたかもしれない。

しかし、齢七十を越えてこの鋭い観察眼。
時には自分では歩けないような場所を、
誰かにおぶってもらいながらも、
幸田さんは、崩れた大地や川を
独自の視線と感受性でえぐり取っていく。

いや、えぐり取っていくは
表現が強過ぎるかもしれない。
幸田さんは、怪我をしてしまった大地の傷痕を、
じっと見つめ、自身の心も痛めながら、
どうしたら治癒出来るのか、
その道の専門化ではないがそのために
自分に何か出来ることはないか、
懸命に考えていたのではないかと思える。

この作品を読んでいると、
いかに日本が、いにしえより
自然の意に翻弄されてきた国であったかに
気づかされる。
日本という国の負う宿命について考え、
その地に生きる者としての心がまえについて
教えられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫本
感想投稿日 : 2013年3月21日
読了日 : 2012年4月30日
本棚登録日 : 2012年3月26日

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