生き延びるためのラカン (ちくま文庫 さ 29-3)

著者 :
  • 筑摩書房 (2012年2月8日発売)
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〜女性を言葉で明確に定義づけることはできない。なぜなら精神分析における性はセックスのことではないから。でも男は定義づけられる。なぜなら男はペニスをもつ存在だから。~
これはそもそもペニスを精神分析の根底に掲げていること自体男性中心的でおかしい。エディプスコンプレックスにおいてファルスを絶対的なものとして、母の体力や戦闘能力の欠如をペニスの欠如と結びつける点から何の根拠もない男目線の賜物。その男の特権意識をひきづりおろさなきゃ「存在の根拠はファルス」で女性はファルスのない性、男ではない性としてしか解釈されない。フロイトの論をそのまま借用してファルスを存在の前提に置いたままじゃ女性は永遠に謎のまま。筆者はフェミニストに対して、ラカンは男性がえらいとか優秀だとか考えている訳ではないことを強く弁明しているが、問題の本質が全く分かっていない。ファルス(男)を主にして女は謎だと言う、その土台が男性中心的だということ。様々な分野で西洋中心主義だとか、自文化中心主義だとかがはびこっているが、精神分析の分野は酷いものがある。過去の誤った権威を未だにひきずりおろさない。そこを切り崩さない限り女性は永遠に謎のもままだ。女性はこの想像界において男ではない性としてしか存在させてもらえない。
「女性は無意識の領域ではペニスが欲しくて男性なしでは語り得ない生き物」だという理論が未だに信じられているなんて。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年2月9日
読了日 : 2014年2月9日
本棚登録日 : 2014年2月7日

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