わるいやつら(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1966年3月30日発売)
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感想 : 79
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まったく、とんでもないあほボンの登場です。

大病院を父親から受け継いでおきながら、まったく医者としての仕事をせず、

骨董品蒐集にうつつをぬかして経営困難に陥らせる。

薬代の支払いさえままならないのに、まったく意に介さず
不倫中の金持ちおばさん達からお金をせびっては食いつないでいる大バカ野郎だ。



「なんだこいつーーー」

怒りが頂点に達したときあたりから、

ぼつぼつと周りの女達や友達からいやがらせを受けはじめる。

自分がはめられてるなんて気がついてないんだから、ほんとにおめでたい。

彼に対する「あきれ度数」が大きければ大きいほど

後半、仕打ちを受ける彼の姿がおもしろくなってくる。



もちろん周りの友達や女達は「わるいやつら」でしょうが、

平気で殺人を犯しておいて

「自分が悪いことをしたとは思っていなかった。

ただ、たいへんな損をしたという思いだけだった。」

最後の最後まで、そんな感想しか出てこない男には

同情の余地はまったくない。



ただ今テレビ朝日系列でドラマ放映中ですね。

米倉涼子の「松本清張・悪女シリーズ」も

「黒皮の手帳」「けものみち」に続き第三弾になりました。

はっきり言って、テレビの方は見てないです。

ちょっとストーリー変えてるみたいですね。



昭和41年発行の小説なので、長距離電話をすると繋がるのに時間がかかったり

青森ー上野間は電車に14時間も乗ってなきゃいけなかったりと

松本清張の小説は古き良き時代のスローペースを感じたりして

懐かしい気分にひたれます。

女の名前はトヨとかチセだもんね。(カタカナだし。)

さすがに米倉涼子がトヨはありえないから「豊美」になっていた。




読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ま行
感想投稿日 : 2007年2月21日
本棚登録日 : 2007年2月21日

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