恋愛小説もたまにはいいものです。ひさびさに胸がざわざわせつなくなりました。
突然自分の前から姿を消した婚約者を探して、知らない土地を探して回る萄子(とうこ)の痛々しさ。
そして娘を殺され一時は復讐に燃えるが、全ての元凶は自分の娘にあったのだと知ってしまう韮山のあわれ。
最後まで登場しなかったけど、シャブ漬けになってしまった勝を勇気づけ、力となった飛田遊郭の女。
台風の中、夫に会いに来た女に対して、自分は姿を現すこともなく、
二人きりで小屋にこもる彼らに差し入れまでする寛大さ。
もしかして、嵐の中抱き合ってるのでは・・・という妄想にかられなかったのか。
昔の女とよりをもどして、自分から去って行ってしまうのではないかと不安にならなかったのか。
この女性の強さは印象深い。
結局死んでしまった人は生き返らず、起きてしまった悲劇は消し去ることもできず、
時が経って忘れ去ることだけが解決法だということを思い知らされた。
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カテゴリ:
な行
- 感想投稿日 : 2003年6月11日
- 本棚登録日 : 2003年6月11日
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